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インタビュー・対談

育児で仕事3割減。それでも会社は伸びていく

2017/09/27
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経済の場で手腕を発揮し、ビジネスで成功しているリーダーは、家庭ではどのようにパートナーや子どもとコミュニケーションをとり、家族との時間を過ごしているのか。ライフワークバランスが重視されるなか、ビジネスの戦略やマネジメント、経営ビジョンだけでなく、ビジネスリーダーが実践する仕事と家庭の両立について、サイボウズ青野慶久社長に話を聞いた。

自信を失った最初の育児休暇

もともと僕はワーカホリックの「仕事大好き人間」でした。経営会議は20時以降にやることもあったし、社員を土日に集めて仕事をすることも当たり前。僕個人の働き方は、ブラックそのものだったかもしれません。だから、1人目の子どもが生まれたとき、家事や育児は「他人ごと」でした。

その一方で、サイボウズは働きやすい会社を目指して動き始めた頃。表向きにはそう言っておきながら、会社のトップである自分が仕事と家庭のバランスが取れていないのは問題だと感じましたし、当時本社を置いていた文京区の区長から育児休暇をすすめられたこともあり、PRにつながるという打算(笑)もあって、2週間だけならという軽い気持ちで育児休暇を取ることにしたのです。

サイボウズの青野慶久社長のプロフィール写真 サイボウズの青野慶久社長のプロフィール写真

結果的にこの2週間が、僕の考え方を一変させました。とにかく子どもを育てるのが大変。うまくいかないことだらけで完全に自信を失いました。

子どもは言うことを聞かないし、離乳食を食べさせるのに30分以上かかる。なんて非生産的なんだ、と思うことばかり。少し出かけるのにも、おむつや着替え、ミルクセットなど必要なものを全部持っていかなくてはならず、仕事で感じることができないストレスを日々感じていました。

3人の子育てに、できる限り時間を割く

ただ、最初の育児休暇で子育ての大変さと、仕事と育児・家事を両立させることの難しさを体験し、家庭をつくることや、一人の人間を育てることの重要性を考えるようになりました。だから、2人目と3人目が生まれたときも迷わず育休を取り、育児に割く時間を増やしていきました。

現在、3人の子どもは7歳と5歳と2歳。朝は毎日保育園に連れていき、「パパ料理Day」にしている木曜日は、会社帰りにスーパーで買い物をして料理をつくり、毎晩子どもたち全員の歯を磨いて、寝る前は絵本の読み聞かせをしています。

保育園は大人の足なら10分程度の距離ですが、ベビーカーに乗ってくれるはずもなく、道中でミミズなどを見つけてしまったら、もう大変。なかなか着きません。なんとか送り届けて出社したら、夜は19時半までに帰宅。

そこから3時間は家事と育児をみっちりやってそこから仕事に戻り、0時半には寝るようにしています。夜の接待は基本的にランチに変えてもらうなど、ライフスタイルは一変しました。

青野慶久社長とご家族が公園にいる写真
青野慶久社長とご家族が食卓にいる写真

会社と家庭、優先度がはるかに高いのは家庭

それまでは、会社のことすべてに関わり、受信メールは全て返信するような働き方でした。でも育児を経験してからは、物理的に時間がありませんから、自分が「できること、すべきこと」と「できないこと、しなくてもいいこと」を意識するようになりました。

今は、意思決定と広報に関する仕事以外の権限は次々と社員に委譲。「あとはよろしく」と任せるようになったことで、社員の裁量が増え、やりがいにもつながったと聞いています。

サイボウズの売上と離職率の推移グラフ

サイボウズの売上と離職率の推移

会社と家庭、優先度が高いのは、まぎれもなく家庭です。社長の僕が言うのもなんですが、会社は転職できますが家庭はできません。子育ての責任は親にあり、一人の人間の人生がかかっています。

家庭を優先しながら大きな成果を出せる仕事ができるように。働き方の自由度を高め、かつ高いパフォーマンスも出せるように。——取り組んだのは、会社の理念を明確にすることでした。

「フルタイムで働け」「見える場所で働け」というのは、結局のところ理念に共感されているのかがわからないからだと思います。だけど、理念に共感していたら、働き方はさまざまで良くて、全員がフルコミットする必要もなくなります。

サイボウズの青野慶久社長の写真

週3日でもリモートでも構わなくて、サイボウズに時間を割くときは、理念にコミットしてもらう。この徹底が、結果的に働き方の自由度を上げました。

僕は16時になると「お迎えに行きます」って帰るから、働くお母さんからは、心理的に楽になったと言われます。申し訳なさそうに帰る必要がなくなったんですよね。今考えれば、昔は本当に子育て中の人を無視した働き方をさせていたなと反省しています。

自分で選択し、自分で責任を取れるように

僕の子育て論なんてちっぽけですが、育児を通じて感じた子育てで大切にしている教育論は、子どもを型にはめないようにすることです。100人いたら個性は100通り。自分で選択して、自分で責任を取る人になってほしいから、縛らないのが僕のやり方です。

宿題をやるもやらないも、自分で決めたらいい。やらないで学校に行き、先生に怒られるのも子どもの選択ですから。ただ、隣で妻は「宿題をやりなさい」と言うから、その矛盾も含めて(笑)自分で選択し、責任を取る大人になってほしいというのが教育方針です。

今の時代で言えば、ゲームやデジタルデバイス、コンテンツの触れ方に対して、親の考えはさまざまで、あまり触れさせない家庭もあるかもしれませんが、私は野放図。子どもが触りたいものは、すべて触らせるようにしています。

ゲーム類はもちろん、AmazonやYouTubeなどの動画、iPad、iPhoneなど、限定はしていません。小学生になった長男は、すでにiPhoneを操っています。

ただ、そのぶんセキュリティには気を使っています。物理的な安全対策はもちろん、デジタルデバイスが子どもたちの近くにある今、サイバーセキュリティに細心の注意を払わなければいけません。親である僕がしっかりと対策を講じてあげなければならない。

子どもにも簡単に使えるデジタルデバイスが増え、IoT環境が進めば進むほどセキュリティ対策の重要性は高まる。親として僕は、子どもたちのサイバーセキュリティ、デジタル空間での「安心・安全」にもっと気を使わなければならないとこれまで以上に思っています。

iPadは30分でロックがかかるようにし、子どもに適切でないコンテンツに触れたり、誤って重要な情報を漏らしたりしないように「ペアレンタルコントロール機能」を使って対策を取っています。デジタルネイティブな子どもたちですから、可能性の芽を摘まないよう、好きなように使わせつつ最低限のセキュリティは保っています。

ホームセキュリティの観点では、BOCCO(ボッコ)という小さなコミュニケーションロボットも活用しているんです。このロボットにはメッセージの伝言機能とドアセンサーがついているので、何時何分に玄関が動いたかスマホへの通知でわかります。カメラをつけるのに抵抗がある青野家は、ドアセンサーがあれば十分です。

サイボウズの青野慶久社長がスマホを指さしている写真

働き方改革とは、働き方の自由度を高めること

僕は家事や育児に関わるようになったことで、仕事にかける時間は3割は減ったと思います。でもおもしろいことに、家事や育児に使っている3割が仕事へのシナジー効果を生むようになったのです。

働き方改革とは、残業をさせずに早く帰らせることだと勘違いしている企業や人がとても多いと感じます。それでは、働き方の自由度を高めていると言えないと思うんですよね。僕が最初できなかったように、働き方の自由度が低いと、家庭づくりも子育てもどちらも実現できません。

ワーカホリックだった僕ですが、そこに子育てが加わると、休暇をもらっているのに仕事も子育てもこなせない無力感に襲われました。それくらい、家庭をつくることは片手間ではできないし、パートナーに任せっきりにするわけにもいかないことです。

よく、働くお母さん・お父さんが、フルタイムから短時間勤務に変わると、責任のない仕事しか渡されなくなったという話を聞きます。しかしたとえ短時間でも、会社の理念にコミットして働けば、時間に関係なく高いパフォーマンスは出せるもの。

誤った働き方改革をしていては、人間にとって大切な場所である家庭をつくることも、子どもという一人の人間を育てていくことも、もちろん仕事で高いパフォーマンスを出すこともできないと感じています。

ペアレンタルコントロールの必要性を説明した画像 ペアレンタルコントロールの必要性を説明した画像

取材:木村剛士 構成:田村朋美 デザイン:砂田優花 写真:森カズシゲ 制作:NewsPicksブランドデザイン

※本記事は、2017年9月27日に、NewsPicksに掲載されたPR記事です。

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